率先垂範する その2
率先垂範する その2
たしかに、最前線の塹壕のなかで泥水をすすりながら兵を励まし、ともすれば崩れそうな自分の陣地の叱咤激励をし、最前線に踏み止まっている部隊長、大将は素晴らしいという評価もあると同時に、そういう考えなしでやっているものだから、その局面は守れたかもしれないが、一方の右翼、左翼の陣が打ち破られて、結局は敗走に継ぐ敗走をして全滅してしまったではないか、という意見もあります。あの考えなしの部隊長が格好よく最前線に行き、一部の兵に素晴らしい部隊長だと誉められて、それに酔ってしまっているものだから大局を見失ってしまって、わが部隊は全滅したという非難を受ける例もあるのです。
かといって、最前線では凄惨を極め、互いに弾薬が切れて白兵戦になり、敵味方入り乱れて銃剣で血だるまになって戦っているという悲惨な状況も知らないで、後方の丘の上に陣取り、悠々と戦況を見ていたとしましょう。この場合いくら戦況の報告があっても、丘の上の司令官にはその緊迫感が伝わらないため、戦局を誤り敗北に至ることが考えられます。後方にいて見ていたらいいのか、前線に行ったらいいのか。私は、どちらも真理なのだと思います。後ろにいて全軍を見渡して指揮を打つのも真理です。最前線で兵と苦楽を共にし、死線をさまよいながら、みんなを叱咤激励するのも真理です。ですから、どちらかに偏っていてはいけないのだということだけはわかりました。
前線だけで働いていたのでは戦局を誤ってしまいますから、前線で兵を叱咤激励し、みんなと一緒に苦労しながら、取って返して後方に行き、全体を見渡して仕事をする。臨機応変に行ったり来たりすることが必要です。しかし一番大事なことは、やはり、社員の先頭を切って自分が仕事をするという勇気です。私はそう思ったので、率先垂範するということを言っているのです。この率先垂範は社長だけの問題ではありません。事業部を任せている部長、次長、課長もそうでなければなりません。人をアゴで動かすだけが能ではないはずです。
自分自身で自分の手を染めてやっていくような人でなければなりません。そういう意味です。仕事をする上で、部下やまわりの人の協力を得るためには率先垂範でなければなりません。人の嫌がるような仕事も真っ先に取り組んでいく姿勢が必要です。どんなに多くの、どんなに美しい言葉を並べ立てても行動が伴わなければ人の心をとらえることはできません。自分が他の人にして欲しいと思うことを自ら真っ先に行動で示すことによってまわりの人々もついてくるのです。率先垂範するには勇気と信念がいりますがこれを常に心がけ実行することによって自らを高めていくこともできるのです。上に立つ人はもちろんのことすべての人が率先垂範する職場風土を作り上げなければなりません。
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